むだ時間を含む制御系を設計する場合,むだ時間要素を有限 次元近似してその近似誤差に対するゲインスケジューリング を行う手法が知られている.しかし,この手法で設計した補 償器を実装する際には,近似誤差も実装しなくてはならず, その実装は困難である.これに対して本論文では,むだ時間 を含む制御系の設計問題において,むだ時間要素の入力が観 測出力として利用可能で,かつ,むだ時間要素の有限次元近 似モデルが近似誤差のLFTとして与えられた場合に,むだ時 間要素と有限次元システムから構成される実装可能な補償器 の設計法を提案している.具体的には,(1)与えられた問題 を,近似誤差の出力が観測出力として利用可能であるとした, 等価な問題に帰着できることを示し,さらに,(2)導出され た等価な問題に対して,近似誤差に対するゲインスケジュー リングによって補償器を設計する場合,近似誤差をパラメー タとして持たない補償器が設計可能であることを示している.